ワンコ

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?のワンコのレビュー・感想・評価

4.5
【労働組合活動家】

映画「私はモーリーン・カーニー」の中の”コアな”サイド・ストーリーであるアレバ社の解体は、東芝の解体に似ている。

福島原発事故の影響はあったにはあったが、それよりも甚大だったのは、海外投資(東芝はアメリカ原子力事業大手WHの買収、アレバはフィンランド原子力事業)の大失敗だ。

アレバは、打開策をフランスの電力会社EDFや中国に求めるが、東芝は、フラッシュメモリー事業を分社化(キオクシア)した上で、投資ファンドによる買収(投資)提案を受け入れ、まもなく上場廃止となる予定だ。
また、キオクシアも世界的なフラッシュメモリー事業の低迷を受けて、アメリカのウェスタン・デジタルとの経営統合が決まった。統合後の会社は巨額の融資をメガバンクから受けることが出来るようになるらしい。(←ところが、10月27日、キオクシアとウェスタンデジタルの経営統合は、韓国SKハイニックスの反対でいったん白紙になった。)

レビュータイトルは、この映画のオリジナルタイトルの訳そのままで、邦題は終盤のモーリーンの言葉から取ったのだと思う。

ところで、今時、こんなジェンダーをフォーカスして言うのはおかしいことなのかもしれないが、是非、女性に観て欲しい作品だ。

フランスは日本よりもずいぶん女性の社会進出がすすんだ国のようなイメージがあるが、ほとんど日本と同じじゃないかと思わさせられる場面が多々出てくる。

それは会社という組織の中だけではなく、フランス社会そのものにも強い偏見が潜んでいることだ。

少し前に日本の民事裁判で勝訴した、女性ジャーナリスト伊藤さんの性被害訴訟について、当初、”少しくらい綺麗なもんだから相手の男性に色目でも使ったんじゃないか”みたいな誹謗中傷が結構な数の女性から寄せられたとの記事を読んで、無茶苦茶だなと思っていたのだけれども、映画の法廷の女性裁判官の表情を見て、このことを思い出した。

ただ、最後の法廷の男性捜査官の怯えたような表情を見て、男性は女性の社会進出が、つまり女性が自分たちの競争に加わることが怖いのだと思ったりもした。単に競争相手が増えるだけじゃなくて、優秀な人がいるに違いないからだ。
映画では、決定打は、アシスタントだった若い女性捜査官が握っていたのだから。

フランスは、EUの統合と統一通貨ユーロの導入まで、敵国だったドイツなどとともに政治的に主導的な役割を果たし、第二次世界大戦後のド・ゴールからずっと有能な大統領を輩出して来たと言われている。
だが、EU統合後くらいからは、フランス国内でも、小粒なパッとしない大統領が増えたなんて揶揄される状況になっている。
その代表が、サルコジやオランドなんだけれども、この映画には、彼らの名前がしっかり出てくる。

実は、東芝どころか、日本自体もフランスと結構似てるところがあって、バブル経済の破綻後、小泉政権の構造改革でいったん盛り返しそうになったが、それを引き継いだ故安倍ちゃんや麻生ちゃんがあんなんだったので景気はいつも海外頼みで、引き継いだ岸田さんへの不信感は募るばかりだ。それに、前述の2人は、女性の社会進出などまかりならんという極右団体・日本会議の主要なメンバーだ。

あほくさ(映画のことじゃありません)。

女性の方達、是非観て。
ワンコ

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