叡福寺清子

パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

3.0
貧困に屈せず,己が道を邁進し,最後の最後に栄光を掴む.いつものアレです.事実に基づくアレ.当然,エンドロールには本人の映像が流れます.御本人は公開時,31歳という若さ.大変素晴らしいです.ですが,私は釈然とはしない心持ちで,劇場を後にしました.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.

ご存知の方はご存知でしょうが,呼延灼の中の人はアルコール依存症でして,現在断酒歴13年目でございます.毎週毎週,断酒例会の通い続けておりますが・・・えっ!?断酒会ってなんや?ですって.よく洋画であるでしょ.アル中患者が教会に集って,車座に座って,「僕はスティーブ.アルコール依存症です」「こんばんわ,スティーブ」って挨拶した後,酒害体験を語り合うヤツ.あれです,あれ.
断酒会は体験談を語る前に,6か条からなる「断酒の誓い」を読み上げますが,5か条目が「私たちは家族はもとより、迷惑をかけた人たちに償いをします」です.本作に感じた違和感は,この文章で思い出した事で理解できました.

つまり,ヤジットさんは,自身の行いが原因で現在の児童養護施設から,より劣悪な施設へと移籍させられそうになるも脱走しました.ヤジットさんが原因で,解雇された職員への労いもそこそこに.最初の厨房もいつのまにか退職し,アフリカのどっかのレストランで勤務してるし,さらにはパトロンを見つけて,世界一のパティスリーを雇えると豪語して,実際そうなったのか作中での言及はない.単なる編集の拙さなのかもしれませんが,ヤジットさんの生涯が繋がってないんですよ,本作は.

氷像を土壇場で変更したのだって,結果オーライなだけであって,「天才だからって何してもいいと思うなよ,このガキ」って私ならキレます.
それと,ヤジットさんはずっと野宿状態だったわけですが,匂わなかったのかしら?とてもじゃないが,食事を提供する人間の行為とは思えないんですがね,あたしゃ.

マネキンって何のために準備してたの?とてもとても大切そうでしたけど,ある程度の説明はあっても良かったんじゃないかしら.でないと,ヤジットさんがあそこまでキレた理由がわかんないじゃん.前述の編集もですが,そーゆー「映画を観せる」技術が拙いが故に,ヤジットさんの生涯が繋がってないように感じ,結果的に作品を毀損しているのだとしたら,ヤジットさんの苦労も報われませんですぞっと.