叡福寺清子

モーリタニアン 黒塗りの記録の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

3.6
モーリタニア出身の青年モハメドゥ・ウルド・スラヒさん.その才を買われドイツに留学.ときはアフガン侵攻の時代.反共精神から,アルカイーダで戦闘訓練を受けます.
時は過ぎて,9.11の時代.テロのリクルーターの嫌疑をかけられたスラヒさん.グアンタナモに収容されます.実際,過去のテロ行為に関与していたスラヒさん.絶体絶命の大ピンチ.でもって,外交ルートから釈放手続きを依頼されたのは人権弁護士のナンシー・ホランダーさん.はたして,スラヒさんは,無事グアンタナモから開放されるのでしょうか!
と聞けば,連想されるのは『ミセス・クルナスVSジョージ・W・ブッシュ』.婦人の人柄もあってか『クルナス』の方は明るい基調でしたが,本作はスラヒさんはもちろん,ホランダー弁護士や海兵隊検事のスチュアート・カウチ中佐等々全員が,眉間に皺寄せて大真面目モードだったので大変疲れました.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.とはいえ,129分の長さを感じさせなかった事は評価いたします.
個人的に一番の注目はカウチ中佐でございまして,国民感情よりも法を重んじる生き様は,当時を知る人間としては驚嘆という言葉しかございません.とにかく当時は「アラブ人は全員テロリスト」という空気が蔓延していまして,本邦においてもUSAに比べりゃ薄味でしたが,その空気はございました.そんな空気の中,ましてや軍属の方が法に照らして検事を辞退するなんざぁ,どれほどの勇気がいったことか,そしてどれだけの事を失ったのか.できれば続編かなんかで描いてほしいもんでございます.