トライベッカ映画祭にて。

韓国系アメリカ人の少女が両親の離婚と妹の世話で学校も友人関係もあまりうまくいかずモヤモヤする話。

10代の少女が家族の問題、移民の生きづらさ、経済的な困難と夢の実現の間で苦悩する、青春ドラマでよく見るやつ。

思春期の不安な時期に父親が自身の問題で精一杯、それでも家族は絆を再構築…という単純に前向きな話でもなく、ひたすらモヤモヤを描いていた印象。

いい映画なのかもしれないが、私にはまったく合わずだった。

アメリカで韓国移民として育ったへウォンが、アメリカでの夢の実現を子供に託す母と暮らし、その母と離婚した父との間を妹と共に行き来しながら、10代の思春期につきもののモヤモヤをうまく消化できずに日々を過ごす様が美しい映像で紡がれている。

監督も韓国系アメリカ人だそうなので、自身の移民としての経験も少なからず反映されているのだろうと思う。私はこのような境遇に育っていないのでよく分からないが、この映画に出てくる主人公のように韓国人とアメリカ人という二つの異なるアイデンティティを自分の中に共存させている人間が、それらとどのように付き合って人生を積み重ねてゆくのかは個人的には興味深い点ではある。

とはいえこの映画はその点をそこまで突っ込んで描いている訳ではなく、あくまでも10代の少女が抱える、「完璧な家族像」への憧れであったり、親からのプレッシャーへのあがない、異性との淡い交流、友情の芽生えとその破綻、という割とありふれた感情の連続に終始していた。その淡々とした描き方や映像に凝っているあたりは個人的には好感を持ったが、物語としての強みには欠けていたかもしれない。

しかしながら、アメリカにおける韓国人コミュニティが少なからず垣間見れたのはなかなか面白かったと思う。学校教育のあり方もちょっと日本の受験事情を思わせるような感じがあり、ある意味妙な懐かしささえ感じてしまった。

毎日の一瞬一瞬が重苦しくも輝いていたあの頃の感情がふっと戻ってくるような、そんな愛おしさのある作品。