mplaceさんの映画レビュー・感想・評価

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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.9

殆どセリフが挟まれる事なく、あくまでもロバEOの視点で進むロードムービー。
しかしEOが旅路で出会う人間達の振る舞いが傲慢で愚かで滑稽であったり、あるいは手を差し伸べようとするもうまくいかない不条理な
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ルシアとSEX(2001年製作の映画)

3.4

仕事の関係者からこの映画のサウンドデザインが良いと勧められたのがきっかけで鑑賞。ベルリンにある近所のレンタルビデオ屋にDVDがあるようだったのでそこをよく利用している家人に頼んで借りてきてもらったのだ>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.4

数ヶ月前にベルリンの映画館で鑑賞したが、その後内容の咀嚼に時間がかかった。一時期SNS上で話題になった、米国の劇場で笑いが起こったと言われる問題のワンシーンについて、私が上映を観たベルリンの観客からも>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

2.6

私はこの映画で初めてこのプリシラという女性の存在と、彼女とエルビス・プレスリーとの関係の歴史や、プレスリーが西ドイツで米国軍の兵役についていた事、またプリシラも軍人家庭で育ったバックグラウンドがある事>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.2

自分の母語とは異なる言語を話す外国に住んだ経験のある人なら分かると思うのだが、言語の壁によって必然的に人間関係や社会生活において何らかの有利不利が生まれたりする。フランス人の夫とフランスに住むドイツ人>>続きを読む

ムーンライト(2016年製作の映画)

3.9

黒人のコミュニティを舞台にし、薬物依存やドラッグディーラー、母子関係の機能不全、暴力などを登場させるいわゆるギャングスタっぽい映画かと思いきや、そのようなステレオタイプなイメージを裏切った繊細で美しい>>続きを読む

Civil War(原題)(2024年製作の映画)

4.0

誰が何故、いつどのようにしてこの市民戦争を始めたのか明確な理由が説明されないまま物語が進むのだが、これはアメリカに限らず他の国でも起こり得る話でもあると思うので、あえて理由を明示しないことで世の中に起>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.3

イラン国家に深く根付いている女性蔑視と男性優位社会を、娼婦を次々に襲う連続殺人鬼とそれを追う女性ジャーナリスト、さらに彼らを取り巻く者達を通してサスペンスタッチで批判的に描いた良作。

映画の原題は「
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

2.8

ベルリンの映画館で鑑賞しました。
濱口監督の「ドライブ・マイ・カー」の作風は好きだったので期待して見たのだが、正直ちょっと期待しすぎたかもしれない。音楽も映像も美しかったし、物語のアイデアそのものも興
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

3.5

様々な言語的バックグラウンドを持つ人達や手話を用いた会話を登場させたり、主人公・家福の心を動かす物語のキーパーソンとなるドライバーが若い女性であったり、演劇監督といういわばボス的な立場である家福に「弱>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.9

幼い頃の初恋の相手と大人になってから再会するというのは物語ではよくある設定だが、そこに国際性と静謐さ、そして音楽と映像美をバランスよく絡め合わせる事でとても上品で大人の物語に仕上げられている。

ノラ
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CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.0

学校のような集団生活において異質な存在として自分が認識された場合に起こりやすいのは、いわゆるいじめや仲間はずれであったり、からかいの対象にされてしまう事である。
繊細で多感な思春期においてそのターゲッ
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プラットフォーム(2019年製作の映画)

3.9

格差社会や富の分配システムについて、またそのような社会の価値観の形成を担っている資本主義あるいは社会主義の双方を様々なメタファーを用いながら批判的に扱っている作品。

一般的にこのような社会システムで
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PLAN 75(2022年製作の映画)

4.2

ゴダールはその91年の生涯を安楽死を選ぶことによって終わらせたのは周知の事実ですが、その事実もまた現今の安楽死の是非を問う社会に一石を投じたでしょう。しかしゴダールのように親族や関係者に恵まれている人>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.7

捨てられかけた赤ちゃんを媒介として登場人物達が巡り合い、擬似家族を演じていく中でそれぞれが自分の過去と折り合いをつけることを試み、次の人生へと舵取りをしていく様子が俳優陣によるきめ細かい演技によって鮮>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

2.9

映像美と挿入される音楽のセンスの良さ、そして役所広司の演技の素晴らしさのお陰で成り立っている映画のように私には見えました。

Wendersが好きな東京の風景や日本人の仕草、振る舞いが一通り紹介されて
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希望の灯り(2018年製作の映画)

3.9

フランツ・ロゴフスキとザンドラ・ヒュラーの黄金コンビでの演技がとても良い。

薄暗い大型スーパーマーケットの店内で在庫整理をしたりフォークリフトを操ったりというシーンが主を占める映画なので絵的には地味
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ロブスター(2015年製作の映画)

4.0

生涯独身を貫くのか、あるいは常に伴侶がいる人生を選ぶのか。その選択肢は時にその人の価値観、あるいは本人を取り巻く環境や時に国のシステムによっても左右される場合があります。
しかし本来人間は、独身で生き
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ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

3.7

この映画で演奏される音楽もマーク・コリン監督自身が作ったそうですが、それも十分納得できるぐらいビンテージ機材と70年代後半の電子音楽作品が物語を通して紹介されるので、この監督のエレクトロニックミュージ>>続きを読む

ディス/コネクト(2012年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

この映画はタイトル通り「ディス/コネクト」、身近な人との接続が絶たれた各登場人物が寂しさ、あるいは愛情に突き動かされて危険な行為に及ぶ様を描いた群像劇です。
SNSを通して心の隙間を埋めようとする彼ら
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ダンケルク(2017年製作の映画)

4.5

戦争によって追い詰められた者達が最終的に目指すものは相手国の征服でも集団殺戮でもなく、出来るだけ多くの人間を生き残らせ、繋がった命を共に喜び、生き残った者として平和な未来を希求することだった。
ただ助
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

3.8

1800年代後半から1900年代にかけての米国で席巻し始めた石油ビジネスで主人公のプレインビューが富と権力を求めてのし上がっていく様子と、そのような「父」に翻弄されながら自己を確立してゆく「息子」との>>続きを読む