ノラネコの呑んで観るシネマ

プリシラのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
4.3
14歳でエルヴィス・プレスリーと出会い、後に妻となるプリシラ・ボーリューの物語。
コレはバズ・ラーマン監督の「エルヴィス」に対する、女性目線のアンサームービーの様な作りで、あの映画を観ているとより面白い。
プリシラが17歳の高校生の頃から同棲してるのに、エルヴィスは妙に律儀に一線を超えない。
なんと二人が結婚するのは、出会いから8年も経った後。
最初は彼女を大切にしてるのかと思いきや、彼は結婚や初夜のタイミングも全て、自分の思い通りにしたい人なのだ。
だからプリシラも自分色に染めようとし、彼女も要求を受け入れる。
ラーマンの映画では、スーパースターのエルヴィスは、実はプロモーターのパーカー大佐に搾取される鵜飼の鵜だったが、こちらではエルヴィス自身がプリシラに対して同じことをしているアイロニー。
ただし大佐が搾取したのはエルヴィスのお金だったのに対し、エルヴィスがプリシラから搾取したのは純粋すぎる幼い愛。
二人の間には、歪んでいたけど愛はあったから余計に悲しいのだが、彼女も次第に大人になり、エルヴィスの没落と共に自分の人生に疑問を持つ。
エンディングにかかる、「ある歌」が実に切ない。
終盤のプリシラの葛藤は、もう少し深掘りして欲しかった気もするが、落ち着いた語り口の中に、ソフィア・コッポラらしさが詰まった佳作。
ブログ記事:
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