このレビューはネタバレを含みます
エルヴィス・プレスリーに見初められて、普通の女の子がどんどんソフィスティケイトされていくさまは、まさにシンデレラストーリー的。兵役を終えてアメリカに帰国したエルヴィスから国際電話で「会いたい」と言われて、ファーストクラスのエアチケットが送られてくるだなんてねぇ、そりゃあキュンキュンしちゃうでしょう。
オフステージのエルヴィスとのラヴロマンスは、バズ・ラーマン監督「エルヴィス」では描かれていない、プリシラにしか知らないものもたくさん描かれています。エルヴィスに対して、マザコンで嫌な男という人物像という印象が強くなりました。
ここでは世界的スーパースターのエルヴィスではなく、あくまでもプリシラが主人公。こういうガーリーな題材を描かせると、本当にソフィア・コッポラはうまいなぁと改めて思いました。プリシラが主人公だからこそ、エルヴィスの音楽はBGMで一切流れないという演出も潔いです。まぁ、エルヴィス側が楽曲使用の許可を出さなかったことが理由なんだけど、結果的によかったんじゃないかと思います。「エルヴィス」と併せて観ると、互いを補足し合えます。
卒業するためにエルヴィスをだしに使って、クラスメイトにテストを手伝ってもらったことや、クスリでボロボロになったエルヴィスの姿、プリシラの浮気相手という空手の師範もさり気なく登場するなど、かなり赤裸々な感じがいい。製作総指揮にプリシラ自身も携わっているんですね。
プリシラを愛しながら自分好みに仕立て上げ、何不自由なくさせているエルヴィスなんだけど、女心がわかってないんですよねぇ。長い間撮影で家にはいないし、女優とは浮名を流し、やっと帰宅したのに取り巻きの男たちとはしゃいで遊ぶわ、パーティ三昧だわ、都合のいいときだけペットのように可愛がるわ、挙げ句の果てに気に入らないことがあれば椅子をぶん投げるわで、そりゃあプリシラもストレスと虚無感を感じて、愛想を尽かすのも当然です。
「え?ここで終わっちゃうの?」というラスト。クリステン・スチュワートがダイアナを演じた「スペンサー ダイアナの決意」と同じようなものを感じました。女の一大決断の実行を山場に置いたラスト。
ラストで流れるドリー・パートンの「I Will Always Love You」は、離婚を巡る法廷から車に乗って去るプリシラに向けて、エルヴィスが口ずさんだ曲なんだとか。なるほどね。