みむさん

6月0日 アイヒマンが処刑された日のみむさんのレビュー・感想・評価

3.5
ナチス、ホロコースト関係してるけどちょっと視点が違う映画だった。
監督はグィネス・パルトロウの弟、ジェイク・パルトロウ。

アイヒマンがイスラエルで処刑になった話やそれまでの顛末は他の映画でいくつか観たが、これはその処刑数日前とその後の話で、アイヒマンはチラっと出てくるだけ、彼は南米逃亡後のイスラエルでドイツ語も話さない。

アイヒマンを火葬する焼却炉を極秘で作る人たちを通して描く、当時の市井の人々のドラマ。
あの出来事の裏にはこういう人たちが動いていた。
といっても町のおじさんたちや子供。

ユダヤ人といっても多様で、アラブ系もいれば欧州から逃げてきた(または追放された)人もいる。
直接ナチスの蛮行を目にしたり体験したりした人もいれば、まったく遠い場所であまり知らない人もいる。
そんなユダヤ人たちが集まるイスラエルで、それぞれの立場や思いで歴史的な日を経験する。

上映後のトークで「温度差」と表現していたけど、まさにそうで、アイヒマンに対するそれぞれの感情が全然違う。
彼らなりのやり方で歴史と向き合い、後世に伝えていく、時間がたてば歴史が知られるようになる。
歴史は語られたものだけが知られ、諸事情により口を閉ざして語られなかったものは実際に起きたことすら認識されない。当たり前のことだがそこに改めて思いを馳せる映画だった。

登場人物それぞれの言葉や表情に歴史背景がしっかり含まれていて、それが自然と伝わるようになっている。だから表面上のドラマに加えその裏にある情報量は膨大。
そこは上手い作りだなと思う。

ダヴィッド君のやりとげたことはこうやって映画にはなったけど、いつかきちんと歴史に刻まれる時が来ると良いね。