このレビューはネタバレを含みます
映画『月』
冒頭のテロップで「一部の障がい者は声を上げられない・・」という言葉が出てきます。そこが、この映画の本質なのかなと考えながら鑑賞しました。
宮沢りえさん演じる洋子と、二階堂ふみさん演じる陽子が初対面するシーンで、二階堂ふみさんの挨拶のテンションに思わずゾワっとしました。あのシーン一発で衝撃を覚えました。
自分の家族が重度障がい者で、言葉が喋れないので意思疎通ができません。意思疎通ができない事への様々な思いがあるので、磯村勇斗さん演じるさとくんの思想は他人事とは思えず辛い気持ちになりました。
人間は意思疎通で世界を進化させて来たので、医療や生活におけるあらゆるサービスが意思疎通を前提に考えられています。意思疎通できないという苦しさは家族ですら真意を知る事ができません。
なので冒頭のテロップが全てなのかなと改めて感じました。
さとくんの「あなた、こころ、ありますか?」という問いは、ある種異常な精神でもあるが、人間社会の構造自体が心=意思疎通という側面が強いので、重ね合わせて観ていました。
要所要所だいぶ偏った描き方だなぁと思う部分は多々ありましたが、冒頭からこの映画は「人間の意思疎通とは何ぞや?」という問いかけなのだと思っていたので、割と素直に見る事ができました。