ごっちゅん

月のごっちゅんのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
"これが現実"

感情と思考が追いつかない。

障害者施設で働き始めた洋子は、施設で起きる様々な闇の部分を目の当たりにし、ある決意を持った同僚のさとくんは行動を起こす…

言語化することが途轍もなく困難な作品。

喉の奥に何かが詰まった様な、肚の奥深くに刃を向けられている様な居心地の悪さを2時間半近く感じていた。
目を背けてきた、知らない振りをしてきた、他人事として捉えてきた、そんな自分を自覚しているからなのかもしれない。

こうして書いていてもまとまらない。
まとまるはずがない、このきれいごとではない事実は確かに存在する。

意思疎通が出来るか否かを人としての線引きとするさとくんの価値観は到底理解できないが、洋子と同じく自分が現実に、その瞬間に直面した時に、正しいと思う行動が出来るだろうか、その正しさに嘘偽りないと言えるだろうか。

さとくんとしての磯村さんに凄く引きこまれた。洋子との会話のシーンが一番の見所、と言っていいのかわからないけど、辛かった、辛かったとしか言えない。
さとくんからの全ての問いに正直に答えられる人間がどれくらいいるだろう。

森の奥深くに暗く存在する障害者施設そのものが人間の心を表しているみたいだった。

オダギリさんの役所が唯一の救いだったな、"大丈夫"と言い、自分の現実を生きている。

これは一人で映画館に行って一人で向き合って欲しいですね、きっと言葉に詰まるはずだから。
心が掻き乱される映画、自分が生きる事が何なのかも考える映画でした。
ごっちゅん

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