ごっちゅん

ミッシングのごっちゅんのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.2
"世の中って
 いつからこんなに狂ってんだろ"

どうか無事で、。

娘が行方不明になってから3ヶ月が経ち、母親の沙織里は焦りを感じながらも駅前でビラを配り、テレビ記者の砂田を頼る他ない…

すごい映画を観てしまった。
鑑賞後に二駅分歩いて帰って頭の中でいっぱいにして考えたけどうまく言葉にできない。

警察署のシーンはぶん殴られた様な衝撃、、、

希望が目の前に現れたかと思ってすぐに絶望のその更にどん底に突き落とされる心境は想像を絶するほど苦しい、、
しかも虎舞竜(あれは確かに頭をよぎるからしょうがない)の後だから余計に感情が振り回され、内臓がグラグラする。
ただここで無事見つかれば終了だなと斜めに見てしまう自分も居る。

何もかもを失った。
元の生活に戻るために必要なピースは娘が帰ってくること、ただそれだけなのに一向に情報は集まらないもどかしさと焦り。

自分たちに出来ることなんてたかが知れてる、使える手はメディアでも使ってしがみつき、この細い糸が切れてしまったら本当に終わりだと考えると、強引だろうが縋るしかない。

石原さとみさんの演技幅がこれほど広いとは思っていなかった!!
いやこれは演技には見えない凄み、不安定な精神状態で感情むき出しにして慟哭する姿に圧倒される。
そんな妻を見守り寄り添う夫役の青木さんや沙織里の弟役の森さん含め全員の実力の高さよ。。


"報道は時に間違えるんです"

事実とは、テレビとは、報道とは。

数ヶ月前に読んだ「殺人犯はそこにいる」も幼女の失踪誘拐事件を描いたドキュメンタリーで、作者の清水さんは中村さん演じる砂田に近い立ち位置。
記者の枠を越えて事件の真実を追う清水さんなりのジャーナリズムがそこにあった。

今作の砂田も心から美羽ちゃんを見つけたいと思いつつ、テレビ人として意識しなければならない視聴率や引き付けるネタの獲得など、立場とのギャップも見ていて苦しい。
偏見や思い込みから広がるネットの書き込み、誹謗中傷や悪戯するやつらの心の貧しさはどうしようもないな。どう考えても理解ができない。

数年が経つと人々の興味関心は薄れ、その間にも様々な事件事故が繰り返される。
学童の交通誘導員として道路に立つ行動はせめてこれ以上苦しい思いをする人がいないように、なんとか自分を保つ為に横断歩道に立っていたのかな、。

非日常であるはずのビラ配りが日常に融け込んでいく中で、家族一緒に見るはずだった景色、歩くはずだった道、作るはずだったたくさんの思い出を些細なものから感じ取って想像してしまう悲しさは何をもってしても埋められない。


最後に沙織里が娘の仕草を真似したり、摘んだみかんを見てきれいと言えるようになったこと。協力を申し出てくれた親子など善意は確かに存在していること。
僕としては微かに希望を感じられました。
ごっちゅん

ごっちゅん