よしやん

月のよしやんのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

スコアをつけることは難しい

率直に言えばこの作品はあまりにも無機質で、この題材を扱う上ではその淡々とした雰囲気が最もリアルなのかもしれない。そして名だたる役者だらけなのに、ビジュアルは日常的なもので、決して他人事と思わせない作品。

この作品は、嘘が嫌いだとか、現実はこうだとか、都合の良いものだけを切り取ることへの否定だとかのメッセージが色濃く出てくる。この映画を通して、この事件と向き合うことを意識させたかったんだろうな、と感じた。

「心を持たないものは人ではないので生きる意味がない」
心ってなに?
話せれば全員心があるの?

障がいを持つ人を、人で無くしてるのは、社会だよ。
障がいを持つ人も持たぬ人も、平等に心があるよ。それを表現できるかできないかの違いはあれど、誰かに優劣をつけられる筋合いは、誰にもないわけよ。
いわゆる健常者の心の壊れ方がやけに強く描写されていたけど、これは障がいのゾーンをよりグレーにするためだったのかなと思う。どんな状態が障がいで、健康で、なんて明確に区切れないからこそ、人間の脆さを忠実に表現していたと思う。
光を遮断したり、手足を長年拘束したり、汚い部屋に清掃も入れずに監禁したり、殴ったり、発作を楽しんで見てたり、言葉にならない現実があるけど、そんな心ない社会でいいのかよ。

私はこの事件の速報を忘れない、忘れられない。とても悲惨で、最低最悪の事件だと思うし、犯人にはこれっぽっちも何も共感できない。だけど、障がい者を支援する方々が狂ってしまうだけの綺麗事では済まない現実もこの作品は描いていたし、たった1人ではあるけど、愛情を持って我が子に会いに来る母親の姿もあった。ただただ、現実が表現されていた作品で、作品自体はすごかった、すごかったけど、私はここでスコアにしてしまうことで、事件自体にスコアをつけるような後ろめたさがあって、評価はできない。ただそれだけの理由。

誰もが希望を持って生きていける社会であって欲しいと、こんなに強く願う映画はない
よしやん

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