Major

月のMajorのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
平日昼間の映画館がほぼ満席になるなんて、最近はそう滅多にない。
だから、観客の人数が多い分、エンドロールが流れている間の空気は圧倒的に重かった。

この映画を観て
「誰もが蓋をして見ないふりをしてきた問題。人間の命とは、障害者の尊厳とは何か、つきつけられ、考えさせられた。」とほとんどの人が感想を述べるのだろう。
ほんの少しの間だけ、心の片隅がモヤモヤして、だけどいつの間にかもうこの問題について考える事はなくなるんだ。
ほとんどの人にとって、それは他人事だから。

人間はそういう生き物で、
だから、起きたことはまた起きる。

意思疎通のできない人も立派な人間であって、誰にもその命を奪う権利はないなんて、子供でもわかる当たり前のルール。
でも、果たしてそのルールって本当に正しいの?
10年も寝たきりで、音も光もない世界で感情も持たず、ただ栄養をチューブで流されて生かされている現実は、いったい誰のため?
本当に本人が望んでいる?
監禁された空間で糞尿まみれになりながら全裸で自慰行為をしている男性のそれは?

悲しい結果になり、
涙を流しながら、ひそかに胸を撫で下ろしている家族は本当に全くいないの?

当人たちに寄り添えば寄り添うほど、人の命の気高さに向き合えば向き合うほど、たしかにあの結論に辿り着くのは必然かもしれない。

いったい人間は、どうすればいいのだろう。

磯村勇斗、二階堂ふみの素晴らしい演技に拍手を。
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