森の精霊

月の森の精霊のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.3
『かつてあったことは、これからもあり かつて起こったことは、これからも起こる。 太陽の下、新しいものは何ひとつない。』
冒頭でこの言葉が提示されたとき、歴史上の大きな事件や事故、震災といった全ての過去は二度と起こらないことでは決してなく、再来しうる未来の可能性のひとつなんだと認識させられた。

この作品に出てくる人物のほとんどは家庭や仕事の環境、将来や過去について悩み苦しんでる人ばかりで、その心の負荷が内外どちらに向かうのか、各々の苦悩との向き合い方が終始描かれていたように思える。

「本当にそう思ったことありませんか?」と投げかけるさとくんの目線は明らかに映画を見てるこちらを向いていて、たまたま健常者に生まれただけの自分はこの問題をどう捉えているのか嫌でも向き合わされ、数日間、時折この質問を思い出しては考え込んでしまった。
たしかに経済的に不要であっても人道的に切り捨ててはいけない事はこの社会にはある。
白黒はっきりさせて極論に走るくらいなら、あえて曖昧にさせた方が良いと思うが、それこそがさとくんのいう「臭い物に蓋をする」なんだと思うと複雑でやりきれない

個人的にはさとくんとは別の意味でマンション管理の先輩が無理だった。
さとくんは意思疎通できるかを判断基準にしていたが、他人を傷つける会話しかできない人間のほうがよほど有害だし関わりたくないと心底思った
森の精霊

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