きょむ

甘い人生のきょむのネタバレレビュー・内容・結末

甘い人生(2005年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホテルの総マネージャーとは表の姿で裏ではホテルに出入りするチンピラ達を物理的に叩きのめしてカン社長のお気に入りとなっているソヌさんが主人公。
社長から、若い愛人のヒスちゃんが浮気してるかもで辛い~出張中監視しといて~って言われたのでおうちへ社長からのプレゼントを届けたりチェロ教室への送り迎えをしたりするんだけど、恋愛なんてしたことなく、そこがまた社長から気に入られる要因の一つでもあったソヌさんがヒスちゃんに恋心を抱いてしまう。
結局ヒスちゃんは若い男と浮気していたから、社長の言いつけ通り2人を始末しなきゃけないのに、ソヌさんはそれが出来なくて「二度と会わないこと」と約束させて逃がす。
このあとのDQNの煽り運転を懲らしめるとこ疾走感あって好きなんだよな。かっこいい。
結局それがバレてしまって粛清されるソヌさんだけど、こっからがひたすら可哀想で可哀想で。
縄で吊るされて殴られて嘔吐させられたり、指を折られたり、生きたまま土に埋められたり。特に泣き喚きながら土に埋められるシーンは衝撃。
それでもどうにか敵の隙をついて脱出できるソヌさんほんと強い。衰弱してるはずなのに。キックアクション最高にかっこいい。
こっから復讐が始まるんだけど、意外と銃はあんまり使ったことなくて組み立てモタモタしてるのとか、アホな武器商人とのやりとりとかかわいらしい場面も続くんだよね。
そんなアホ可愛い武器商人はソヌさんによって頭吹っ飛ばされてしまうけど。
ホテルでの銃撃戦でも最初は柱に隠れてビビってるのに、社長の死体見てもうどうなっても良いみたいな大胆な動きになるし。
戦いが終わっても一人呆然としてて、最後まで何でこんなことになってしまったのかまるでわかってなさそうで。
たぶん社長はソヌが恋を知らず自分だけについてきてくれるってところがすごく気に入ってたんだと思うけど、それがヒスに恋してしまったってことで単純に嫉妬というよりは自分だけのソヌだったのに!っていう歪んだ嫉妬なんじゃないかなって思う。
ソヌはヒスを逃がしただけで何にもしてないし自分がヒスを好きなことも全然分かってないし。
社長もそこんとこも分かってて最後にホテルで対峙したときソヌに「何度も考えたけどどうして僕にこんなことをしたのかわからない」って言われてちょっと憐れむような感じでみるんだよな。あ~この子は本当に何もわかってないなって感じの。
ソヌさんは感情に乏しいんじゃなくて単純に知らないんだろうな、今までそういう環境が全くなくていろんな意味で純粋な子供のままなのかなって思う。
最初に社長と食事をしたときの「若い愛人がいるんだ。なんとか言えよ」に対する「え...おめでとうございます」とか。
おめでとうじゃないだろって思ったら「おめでとうじゃないだろ」って社長に突っ込まれてるし。
社長に裏切られてからが辛い分、それまでのヒスちゃんとのシーンを見返すとすごく透き通ってて美しい。ヒスちゃんも神秘的な子だし場面の一つ一つに透明感がある。
それと食べるシーンも印象的。
始まりもソヌがガトーショコラ食べてるシーンから始まるし。仕事に呼ばれても名残惜しそうに何口かそのまま頬張ってから行くし、ヒスちゃんを尾行してるときも屋台でちくわ?もぐもぐしてるし。ヒスちゃん家でもポケットからガムかタブレットか何か出して食べてる。
食べ方がもぐもぐって効果音つきそうなぐらいかわいらしくて子供っぽいのも、無慈悲な仕事の場面とのギャップで素敵。
ヒスちゃんに「おじさん」って呼ばれてたこと気にしちゃったり素のソヌさんは無口だけど子供っぽくて可愛らしいからこそ、こっちも「なぜこんなことに」って絶望感に苛まれる。
正直何度でも見たいし、何なら今すぐにでも見返したいぐらい。すべてのシーンが刺さった良い映画だった。
きょむ

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