えす

Chimeのえすのレビュー・感想・評価

Chime(2024年製作の映画)
3.5
ステンレスに囲まれ電車の反射光が瞬くあの空間だけで嬉しい気持ちになる。振り向いた吉岡睦雄の視線の先には何があったのか。あらゆる起因が示されぬまま次の場面へ移行する不気味さ。日常的動作からシームレスに包丁は振り下ろされ、他者に伝染した狂気は握手を拒まれた右手にナイフを持たせる。音の設計が特徴的な映画だったが、只の軋みともまた違うあの椅子から発せられる音は何だ。そこに重なる金属音のような呼吸が素晴らしい。黒沢清は未だ『CURE』に囚われている。
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