全く世代ではないけれど、映画好きが旧作を遡って鑑賞するのと同じで、プロレス好きだった私は過去のアントニオ猪木の試合を繰り返し見たり自伝や詩集も読んでいるので、年齢の割にはよく知っている方だと思う。
権利の関係なのだろうが、往年の試合映像がちゃんと流されない時点で勝負あり。
一般層にも見やすくするように福山雅治をナレーションに据えたり、神田伯山、有田哲平、安田顕らを登場させるなど工夫は垣間見られるのだが物足りない。
猪木色を排除させたことで新日本プロレスの再建の象徴となった棚橋弘至が、むしろ本作の裏主人公と言えるような構成でそこに関しては感慨深いものがあった。
とは言え、唐突なドラマパート×3は心底つまらなかったし、「底が丸見えの底なし沼」を体現したアントニオ猪木の魅力の上澄みしか掬えておらず残念な作品に映った。