reb

ほかげのrebのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.6
半焼けの居酒屋でひとり暮らす女。戦争孤児の少年。復員兵。片腕が動かない闇市のテキ屋。終戦後、生き残った人たちの絶望と闇を描く。
塚本晋也監督が子供の頃に見た、渋谷のガード下の真っ暗な空間にいた傷痍軍人の姿が印象に残っていて、それが本作の発端とか。
家族を亡くした女性と子どもという組み合わせの中で心がピュアな感じになって、今回はいつもより思いをストレートに作っていると話す監督。
しかし、戦争映画にありがちな大げさな感傷やヒロイズムは全く無く、戦争によって壊されてしまった人たちの心の地獄を、突き放した目線で描き、これでもかと絶望を見せつけられる。
唯一の希望の光は、坊やの全てを見通しているような、真っ直ぐな澄んだ瞳だ。
次回作はこれまでより規模の大きい、海外ロケを含めたものになる予定らしい。
自ら全てを手がける自主制作スタイルを貫き、日本映画界で独自の道を歩み続ける職人監督に、今後も期待したい。
reb

reb