8Niagara8

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版の8Niagara8のレビュー・感想・評価

4.6
ジャン=ピエール・レオの魅力たっぷり。
219分は流石に長いと思ったが、不思議と観れた。特に抑揚もなく、ペースは一定だが、レオの顔面の引力がすごい。
とはいえ、アレクサンドルは腑抜けであり、言うことだけ一丁前のだらしない男。自己擁護的な論理をそれっぽく言ってのける。しかし、当然それは不整合でもあり。
振られたオープニングの時点でその怠惰な気を見せているわけで、悪女、狂女とも受け取れる女二人が絡んで、その三角関係は側から見れば地獄絵図の後半。
アレクサンドルがヒモという形でマリーと二人の生活は安寧にあったが、ヴェロニカが家にひいてはベッドに入り込み、この構図が一気に瓦解する。
女二人は、自立していて一人でも生きていけるというように装うわけだが、結局男にすがる弱さを見せる。
ヴェロニカの独白の長回しは勿論強烈であった。恋愛とセックスの無関係性を滔々と語るが、酔っているだけあって支離滅裂でもあり、しかしながらセクシャルなアイデンティティしかないアレクサンドルの無為性を見せられると、どうも納得いくところもある。セックスが持つある種の空虚さは確かに存在し、それを看破するような全編でもある。
あらゆるモラトリアムに浸かったアレクサンドルに対し、決断、選択を迫り追い詰める。
これは彼が纏うカウンターカルチャーに対するアンチテーゼとも取れる。
8Niagara8

8Niagara8