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ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版のnoelleのレビュー・感想・評価

5.0
受難の3度目。3人隣に並んだ後だったか、同じ部屋の中にいながらジャンピエールレオーは画面外、ヴェロニカとマリーが話しつつお互い別方向の空を見つめるショット。アントニオーニ『夜』のモニカヴィッティ、マストロヤンニ、ジャンヌモローのあのショットを思い出したのだけど、ジャンピエールレオーの上滑り台詞を浴びに浴びた後だからまた別種のディスコミュニケーションの虚しさが画面に満ちていた。泣いちゃうマリー、あそこでレコード丸々一曲聴いてたっけ…ジャンピエールレオー、上向いてハハッと笑うところはキュンとくる。あとシーツのひき方映画から学んだのところ。目の座ったヴェロニカの「気詰まりね」にはローリーバードの「You bore me」が重なった。
ここ最近の女性エンパワーメントものにモヤっていたところ、独白シーンのヴェロニカの倒錯っぷりの方がよほど女のリアルじゃないか…と思ってしまった。とはまだ声を大にしては言えない。

追記:ママか娼婦どっちか、その中間はないのと嘆いていたわけだけど最後には子供を持たない男なんて…と割と極論に走るヴェロニカ。あのあと子供産んだとしてその先の幸せがほとんど想像できないところがやっぱり恐怖の映画。ジャンピエールレオーのプロポーズも苦しい。どうしても女性/男性の括りで見てしまうけど、マリーとヴェロニカの親密なシーンもあり知り合いの方はクイア映画だとも言っていてなるほどと思う。男女の関係では埋まらない心の穴を埋めようとする、けど結局…ということなのかなとも思うのだけど。心地よい「中間」の居場所を求めて見つからない人たちの物語、というところか。
画面から伝わる世界の見方がやっぱり暗くてこの後自殺しちゃうのも予感できる気がする。だから余計ジャンピエールレオーの道化感に泣けてくる。断絶といい60年代を過ぎた後の70年代、時に生死も左右してしまう「倦怠」と毎日隣り合わせの生活、登場人物みんなに頑張ってと言いたくなる。
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