akira

ジョー・ブラックをよろしくのakiraのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

映像と役者の美しさが神がかっている。
冒頭の、ヒロインと青年の出会いと別れもグッとくるものがあった。
が、その後の展開が見れば見るほどおかしなところばかりで、全体的にはあまり気に入らなかった。

まず死神のキャラクターは、設定がブレているように思った。

この映画の死神は、人間界によく精通している。
さまざまな言語を操れるし、クライマックスでは(相当無理はあるものの)国税のふりをして小芝居うつところからも、社会の仕組みをかなり正確に理解していることがわかる。
一方で、人間の文化をまったく知らないような、極端なふるまいをすることもある。
食事の席ではすべてを物珍しげに眺めるし、ピーナツバターのついたスプーンはねっとりと舐めるし、取締役会には部外者なのに特等席で参加して、お菓子を食べる。
はじめは無知だったのがだんだんと人間について理解を深めていくならわかるが、この作品ではそういった成長過程も特に描かれない。
だから、シーン単位でキャラの設定や行動原理がコロコロ変わっているように見え、どんどんどうでもよくなった。
おそらくこの映画が元ネタであろう、ほぼ同じ設定の小説「死神の精度(伊坂幸太郎)」が、どれほどうまくその点を処理して、死神を魅力的に描いていたかがよくわかった。

死神以外では、ヒロインが純情そうに見えてけっこう尻軽なのがいけ好かないと思った。

ヒロインは、冒頭のカフェの場面で好青年に恋をする。
その後、死神が乗り移った彼が現れると、ヒロインはちょっとだけ戸惑うが、その後さしたる説明もないまま、今度は死神に恋をする。
明らかに人格がちがうふたりの男性を好きになるのだから、この女性は単にハンサムな見た目が好き(だから中身が変わっても好きなまま)なんだな、と感じた。
しかも映画がはじまった時点で彼女は別の男(会社役員)と付き合っていたので、1週間のうちに都合3回も恋愛対象が変わった(会社役員→カフェの好青年→死神→カフェの好青年)ことになる。
だから、全然ロマンチックとは思えなかった。
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