でほ

市子のでほのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

⚠︎東京国際映画祭での視聴

歌から始まる映像は綺麗で快適。そこに意味があるのではないかと冒頭から考えても分かるわけがないのに深く考えてしまう。いつかその伏線(歌のシーン)に辿り着くのだろうと思うと、なお楽しみに映画を観進められる。

この作品の主役『市子』という名前に疑問が残った。なぜ市子という名前にしたのか?最近の子供の名前はバリエーションが増えてきている。その中で、〇子という名前の付け方は時代を感じる。令和5年となったいま、少し古臭い名前は馴染みやすくも、妙に気になる名前でスッと作品に興味を持たせた。杉咲花さんにもお似合いだった。

時は市子が生まれた日から始まり、青春を進み、現在へと進む。成長とともに進んでいくので非常に見やすい構成だった。もちろん素直な女の子で、ケーキを食べると美味しくて、好きな人と恋愛もする普通の女の子。ただ、時折見せる胸を簡単に見せられる根性。深めのディープキスや股を触らせる行為など、ませたアイデンティティから分かる行動から、監督の意図が見える。

周りには人殺しや性被害、戸籍のない子などはいる。探さずにも出会えるほどにそのような子は増えている。

『市子』という名前はどこなく距離感の近いものに思えてきた。アイデンティティを提出するには簡単なSNSも人それぞれ接し方があるが、戸籍や人殺しなどの過去や隠しごとを見抜く力や手を差し伸べる力はこれから必要になってくるに違いない。

戸籍のない人の心には拭えない寂しさがあり、結婚や通院できないという社会的な疎外感を感じながら生きている。この大人(親)が作った社会的疎外感を生まれた時から押し付けられ、生きていくしかない子に対し、“助ける“という言葉は優しさなのか。彼氏が“助ける”と何度も言う描写は心の底からの声に聞こえて感動した。
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