すみ

市子のすみのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

杉咲花ちゃんがもっと好きになった。

戸籍を持たない市子にとって、「婚姻届」はどれほどの意味を持っていたんだろう。市子の気持ちを推しはかることすら私には許されない気がしてしまう。
個人的に、市子がただのしおらしい可哀想な女の子じゃないのにすごく惹かれた。不安定で消えてしまいそうだけど強かで、諦めと希望を同居させていて。だからこそ、最後のあの涙も、市子が望んだものも、よりはっきりと感じられたなと思う。

市子にとって過去は消したいもので、過去を話さず「今」一緒にいられる長谷川のそばはとても居心地が良かっただろう。
その反面、それまでの人生も確かに市子の一部で、過去が今の邪魔をする。どうするべきだった?と考えてしまう。
死を選んでもおかしくないような状況で、何が市子をそこまで生に駆り立てるのか。もっともっと彼女を知りたい。

見終わった後、私は私の大切な人をどのくらい知っているだろうかと考えてしまった。
恋人でも友人でも親でも、私が知りえるのはその人が私に見せてる一面だけで、全てを知ることは絶対にできない。知った気になって自惚れてはいけないし、知ろうとすることを怠ってもいけない。
知ることはその人を自分の中に強く残すことで、それはすなわち愛することだ。
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