くさむすび

市子のくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

突っ込みたい所が少なからずあるという不満点はある。特に宇野祥平演じる刑事と若葉竜也演じる義則がしれっと一緒に捜査してるのとかあり得ないと思ったし。義則自身も白確定という訳ではないのに、ペラペラと核心に迫るような捜査情報を喋るのはどうなのか? この辺りは疑問。
だけどそれ以上に今作を構成する要素一つ一つの質が高く、大好きな作品。
まずはミステリーとして良かった。2015年時点での「川辺市子、28歳」という情報が右下に出てくる日付と照らし合わせることで矛盾が生じていることが分かり、そして月子と市子という二つの呼び名が謎に謎を呼ぶ。掴めそうで掴めない二つを軸に、更に難病患者についてや小泉の自殺、市子の殺人の自白など、混乱させないようにしつつも徐々に盛り込んでいくのがとても見やすい。
次に演出。最後の義則と市子の思い出が回想される。カップルの普通の光景の羅列で特に映画的にキュンキュンするとかそういうのは全くないのだが、普遍的だからこそ今作ではそれが感動的に映し出される。ここのためにこの物語があるんじゃないかと思わせるくらい素晴らしい。初めて二人が出会った時の階段でのシーン、市子が名前を聞かれた時の間も良い。あの間が全てを語っている。
最後に言わなければならないのが、杉咲花の演技。中でも感動したのが北とパン屋で出会うシーン。当たり前に生きて夢を持つことが彼女にとってどれだけ大変だったかを言葉と表情で物語る。見事でした。
パンフレットやキャストインタビューなどを読み込んで、年内にもう一回見ます。
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