壱

市子の壱のネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

恋人(長谷川義則)からプロポーズを受けた翌日、突然失踪する主人公市子。長谷川は市子を探す過程で、彼女と関わっていた人々を通して彼女の過去を知っていく。

映画のジャンル的には何より"重たい"って言われる分類に入る映画だと思う。
無戸籍者、筋ジストロフィー症の妹、母子家庭・故に生まれる家庭内暴力や新しい父親からのレイプ。
色んな社会問題を映しながら、救われて欲しいと思いつつ救われない。終始しんどい。
特にキキとの会話の中で、花を見ながら「花は水をあげないと枯れちゃうから好き」って言ってた言葉。
映画見終わった直後は何の比喩か

高校生の頃、同じく"重たい"ジャンルであろう『八日目の蝉』を見た時は、主人公に自分を重ねたりしながら見てた。
こんな境遇になってたらどうしただろう、とか自分視点でしか物事捉えられてなかったけど、大学生になって勉強不足ではあるけど法律勉強したり、社会課題に触れた上で見たら凄い印象変わった。
市子自身も法的欠缺による犠牲者なことは間違いない。けど行き場を求める中で被害者から加害者になってしまうのは、こういう問題の当事者としてはある種必然なのかな…。

映画を通じて見た市子も、最後以外彼女からの心の声は語られない。
全部他者の認知バイアスがかかってる市子だから、誰も本当の市子を知らないまま結局終わる。

市子が起こした色んな行動の動機も明かされず終わる。けどそれがまた現実的だった。
ただ、市子に関わってきた人もみんな救われない。市子は悪魔なのかもしれない。
壱