どうたく66

市子のどうたく66のネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

民法の規定で再婚したときの何日以内に妊娠した場合は前夫の子供とみなす。そんな規定が令和の現在まだ存続している。前夫とDVなどで連絡をとりたくない場合に生まれて来た子の申請ができず、無戸籍になるケースがある。この時代錯誤の法律が今でもあるのは自民党の保守派のせいである。

この映画はそういう社会システムの闇に落ちてしまった人の悲劇の物語。無戸籍の闇にまつわる物語は松本清張『砂の器』や宮部みゆきの小説『火車』、最近では安藤サクラ主演映画の『ある男』などたくさんある。

この映画は無戸籍の悲劇を扱っているが、社会問題にメスを入れるのが目的ではない。杉咲花がみせる孤独の演技が最大の特徴だと思う。希望を失い、踏み込んで来る人をことごとく拒絶し、しかも自分の生活の確保には貪欲なアウトサイダー としてしか生きられない人間を演じ切っている。

『湯を沸かすほどの熱い愛』で娘役を演じているときは、うまいなあぐらいの印象だったが、この映画を観ると間違いなく日本のトップ女優への道を歩み始めたと思う。
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