Erina

市子のErinaのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
新しく法が改定されるのは知っていたけど、
まさかそんな風に古い法律の隙間に取り残された人がいるかもしれないなんて。

映像で観ているだけで切羽詰まった家庭環境、家族みんな諦念の滲む無表情。

ヤングケアラーとしての実態。
少しだけだったけど、一般の人が想像しにくい、オムツ交換や清拭、在宅NPPVや吸引の介助の描写があって、しかも手馴れてる感じが毎日やっている雰囲気で、そこがよりリアルでよかったと思いました。
もしかしたら、食事もできないから、胃瘻からの経管栄養も家族がやってたかもしれない。

そういう医療処置の準備が整っているのがあって、最初は家族でがんばって看ていこうと思ってたんだろうな。

でも、ダメになってしまった。しんどいね。

自分のアイデンティティが揺らぐ時に限って、本当の名前じゃなかったり、自分は何者なんだろうと、私は誰なんだろうと悩み、葛藤し、諦めたような演技が素晴らしかった。

そして、本当の幸せをまた感じたり、夢を抱いたり、”市子”としての自分と新しい幸せを掴もうもした時。

彼女の背にのしかかった重い罪悪感が許さなかった。

ただ同情もするけど、男たちを利用し振り回して、生きている感じがあって。昔からそうやって生きるために利用して、立ち回っていたんだろうなと感じる。

ふらっと生きているけど、ふらっと死んでしまいそうで。哀れで悲しい。

幸せになってほしいけど、
もう無理なのかもしれない。
もう、遅かったのかもしれない。
Erina

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