シャチ状球体

市子のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
1.9
貧困に対する解像度が低いという邦画あるあるはこの映画にも当てはまっていて、市子の人生をミステリー仕立てにしていること自体が不誠実だと思う。

酷い経験や刹那的な人間関係だけを見せて、だから不幸なんだという風に演出するのは全く当事者目線に立っていない。
特に戸籍や障害といった社会の側に課題がある概念を不幸や苦痛、死みたいな印象だけで片づけ、何も背負わなくていい人間の足かせになっている、というような脚本は見過ごすことはできないし、こんな映画が良い意味での評判を呼ぶというのは日本の一般的な人権感覚が問われている。

市子が社会生活を円滑に営めないのは、日本の社会福祉制度に不備があるから。なのにそこは全く触れられず、家族に障害者がいたり両親が揃ってなかったから孤立をして大変で……って、そこは政治の責任だって劇中できちんと言わなきゃダメでしょう……。
というか、月子じゃなくて市子を主人公にしている時点で、ネタとして消費したいだけだよね。

この映画を観て辛いとか感動したとか言ってる暇があったら、選挙で護憲野党の候補に投票したり、余裕がある人は障害者の権利運動を支援しやがれ。
シャチ状球体

シャチ状球体