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市子のmaruのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
重く苦しく、じっとりとした蒸し暑さを感じる作品でした。
どの俳優さんもすごかった。

杉咲花さんの常に悲しみを押し殺したような瞳が、市子の様々な苦しみを黙って語っているようで切なかった…

親…大人に振り回された市子の人生。
母親も生きるのに必死だったのだろうけど、娘の余りにも普通じゃない生き方を早い段階で修正してあげてほしかったなぁ…
せっかく、好きな人と想いが通じ合ったのに。
静かに暮らしたかっただけだろうに。


月子の全てを悟ったかのような最期の瞳も直視するのが怖いくらいだったな…
『その眼差しをどう受け止めればいいの?』って。

気管切開をし、寝た切りで自分では手足もほとんど動かせず、一日の大半を朦朧とした意識の中で過ごしていたようだった祖母が、時々自分で喉から器具を外すことがあった… その時にも『祖母はもう死にたいのでは?』と思った、そのことが思い出されて、月子が選んだ死なのか、市子が選んだ死なのか、死にたくはなかったのか… 考えさせられました。










余談ですが…

市子が口ずさむ『にじ』は、30年以上前から保育の現場で歌われている曲です。
作詞は新沢としひこさん、作曲は中川ひろたかさんです。
このお二人が手掛けられた曲にはステキな曲が多く、長く歌い継がれています。

子どもたちと歌うにはしっとりめの曲。
手話と共に歌うこともあります。

数年前に、とある集まりで中川さんがひとつの区切りを迎える人たちに向けて歌ってくださったことがありました。
『何かを乗り越えていかねばならない人に対する応援歌でもあるんだよなぁ』と涙が止まらなかった。

近年ドラマやCMに使われていますが、個人的に思い入れのある『にじ』が、まさかこの作品の最初と最後に使われているとは…知らなかったので『こんなに悲しい『にじ』聴いたことないよ…』と涙、でした。
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