垂直落下式サミング

次元大介の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

次元大介(2023年製作の映画)
3.0
玉山鉄二が次元大介を演じているため、小栗旬が主演した実写版ルパンの世界観を引き継いでいると思われる。キングダムやら東リベのように、漫画の映像化としてはそんな大成功した気がしないのだけど、そんなののスピンオフはちゃんとしっかりビミョーな出来。
そもそも、次元大介は実写化に向かないキャラクターだ。帽子のつばで顔の上半分が常に影になって隠れてるから、感情を目で語らないし、常に口にタバコをくわえながらモゴモゴ喋るから、腹の底の本音がみえない。それが、次元という男であって、これは玉山鉄二がどんなに頑張っても演技で表現しようがない。どうしてもコスプレの人になっちゃう。
それに、やっぱルパンとセットがいい。オトコノコは、ルパンよりも次元に憧れる。ルフィよりもゾロが格好いいし、ホームズよりもワトソンに感情移入する。
自分は主人公の器じゃないんだってうっすら気づき始めた頃、人並み外れたスゲエやつに付いていきたいし、そいつと対等な関係で横に控えていたいって願望を叶えてくれる存在が、こういう奴らなんですよ。だから、単品でこられても味気ないっす。
砂漠でガンスミスから銃を仕入れるとか、泥魚街なる場末のアンダーグラウンドの無国籍風な美術の仕上がりは、見てくれは確かに往年のルパンっぽいっちゃあぽい気がする。最初らへんの浮世離れしたロケーションは、なかなかみれる。
ついでに、敵の雰囲気も悪くなかった。車椅子の真木よう子が身体障害者なのにめっちゃ強いのは、クラシカルなスパイもののヴィラン風。絡んでくる謎の用心棒たちも、そこそこ重いもんを背負いつつもしっかり悪い奴らで、使い捨て量産型然として愛しい。
アクションは、あんまスローモーション多様にせずに、しっかり説得力持たせて見せてほしかった。義足で車イスだからこそ、この一点は健常者よりも強いんだって欠損の利を感じる動き(例えば足一本ぶん身体が軽いからできる健常者には不可能な動きとか)が一瞬でもあれば好きになれたんだけど、最初とかは単に周りのチンピラが舐めてたから皆殺しにできただけで、次元とは棒立ちで一騎打ちだったからなぁ…。
いいところはボチボチあったけど、ストーリーの鈍重さは看過できない。次元の目的は銃を直してもらうことで、その成り行きで子供を守るんだけど、まあ、まどろっこしくて、かったるい。
子供のエピソードで、毒親貧困家庭みたいな現代的なリアルを入れ込んでくるのもウザい。いいよ、そういうの。ルパンでみたくない。
この内容でしっかり二時間は薄めすぎ。商店街のくだりとか、風俗嬢のくだりとか、ガキのくだりとかサッパリ切って80分くらいでいいっすよ。いらないんでそういうの。