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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのmasatoのレビュー・感想・評価

4.5
仕事と仕事の合間に、タイミング良く見れる映画があれば見ようかな、とスケジュールを見ると『ホールドオーバーズ/置いてけぼりのホリデー』というなんとものんきなタイトルが飛び込んできた。

どこかで聞いたことがあるタイトルだなあと思っていたら、ゴールデングローブ賞で主演男優賞をとった作品だと思い出した。そうだ、監督のアレクサンダー・ペインは『アバウト・シュミット』を撮った人だった。

ということで、なんの情報もなく映画館に飛び込んだら、こんなめっけもんを見つけましたよ、という秀作。おもしろい。なんか、久しぶりにちゃんとしたアメリカ映画を観たという気分になれた。

1970年の年末から1971年の初めを舞台にした物語。ということで、映画そのものがフィルムライクなテイストで始まる。ご丁寧に音声にもちゃんと懐かしい光学ノイズものっけている。映画の始まりも、風景の映し方もどうみたって1970年代のハリウッド映画のようで、見たことのないリバイバル作品のリストア版を観ているのかと思ったくらいだ。

舞台は1970年の年末。ボストン近郊の名門男子高校が、クリスマス休暇を迎えるところから物語が始まる。寄宿学校なので、校内の寄宿舎に寝泊まりしている学生たちも、みんな実家へ帰る。しかし、5名帰れないものがいる。高校生という設定だが、留年を重ねているものもいて、幼い顔をしたのや、ませた顔をしたのが混ざっている。

彼らを監視する役割で、同じように学校に残らなければならなくなった先生が一人。斜視で体臭が臭くて、すぐ怒鳴り融通はきかないハナム先生だ。このハナム先生が生徒たちに嫌われているので、残された5人の生徒たちは最初から気分最悪。とくに、年かさのアンガスは親からも疎まれ、反抗的な態度をとり続ける。この波乱を感じさせる取り合わせのなかに、いつも料理を作ってくれる料理長のメアリーも加わり、物語が回り始める。

物語が始まってから、いろいろ紆余曲折あるのだが、結局、いちばんクセの強いハナム先生、アンガス、メアリーの三人だけが残ってしまう。

この三人の気持ちのやり取りがとても面白い。70年代の色合いを取り入れた作品なのに、演出の注目する視点はあきあらかに現代のそれだ。だから、中盤から、どんどん面白くなってくる。70年代の映画を現代の視点でリメイクしているかのような面白さ。

語られている話題も、今という時代の課題をしっかりと踏まえている。そして、それを笑い飛ばすでもなく、おざなりにするわけではなく、真摯に描いている点が嬉しい。もちろん、課題に正解を出すという意味ではない。しっかりと物語のなかに組み入れ、監督自身の態度を示しているという点で好感が持てる。

みんながそれぞれに真面目で、真摯で、嘘つきで、いい加減。でも、みんな魅力的に見えてくるから面白い。
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