塩湖

悪は存在しないの塩湖のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
おもしろい。言葉にすることでようやく浮かびはじめる「こわれた心」の姿と、いっぽうでここぞというときに強く示される謎の両方を楽しんだ。自然界におけるよそ者である自覚をかかげた巧が説明会の空気をそっと転ぷくさせる瞬間にびびる。車中の会話の妙な長さに濱口がタランティーノ化したのか、と思いかけたが、精緻な言葉を提示しキャラクターの見え方を変化させる、という点で区別するべきか。そこで繰り広げられた会話が「薪割りをやってみる」という実際の行動にうつるところに、きわめて映画を感じる。鹿よけの柵を設置して客が来るんだろうか、と述べた直後に「正直に言ってわからないんだ」みたいないいかたで反語ではないことを念押しする巧の様子になんだかぐっときた。後半は大人視点の『となりのトトロ』かなと思いつつ、さいごは急に映像詩の領域ひろげだしてて、まあ、よくわかんないからこそかなり好き。
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