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悪は存在しないのyumegiwaのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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初日に観たが、当初の感想としては、自然に囲まれた田舎住民と何もわかってない都会の企業という使い古された構図をわざわざ撮ったことが不思議だったし、都会から来た2人の人となりを見せるシーンすらありきたりに見えてしまったんだけど、あのラストの異物感がどうにも飲み込めなかった。

なぜ異物なのかというと、あれは単に町の生活を守るためとかそういうことじゃない。なんかもっと、異邦人の太陽が眩しいせいで人を殺したみたいな話であり、(観念的な話ではなく、カメラがただ事実を映している)
PASSIONの二つの暴力(自分の内側からくるもの/外側からくるもの)の話、親密さの「あなたは私ではないですか?」というワークショップでの会話の延長線上にこの作品はあるのだと数日たってやっとわかった。(収束のさせ方含めて『不気味なものの肌に触れる』も参照できる)
自己と他者の冷酷なまでの非同一性と、だからこそ成立する暴力というもの。
今までの作品はパーソナルな関係を描いていたとすると、今回は社会的なテーマを描いているのかと思ったけどそうではなく、濱口作品でよく描かれる"気まずさ"と巧の行為は本質的に変わらなかったと気づく。

タイトルの出し方ゴダールぽい。と思ってたらパンフレットにもゴダールの話が。
林の中で花と巧が合流するショットが素晴らしい。

@Bunkamura
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