このレビューはネタバレを含みます
山で蕎麦に合う山菜を見つけた時のカメラ目線のショットなど、?となるショットが幾つかあった。特にこのショットは、タランティーノを想起させた。
その一方で、だるまさんが転んだのショットや山で主人公と娘が合流する時の横移動のショットなど、空いた口が塞がらぬような感動的なショットが多々あった。
その際たるものである、冒頭の下から見上げる木々のショットは、濱口竜介がずっと撮りたかった画であったとパンフレットにはある。『偶然と想像』、『寝て目覚めても』などこれまでの彼の作品における、素晴らしい部分を集合させたベストアルバムのような映画なのではと感じた。
ラストの解釈は各々異なるだろうが、マネージャーの男が死んだこと、最後走っていたのは主人公であるということは確定している。その上で僕としては、「バランス」という言葉が非常に重要なのだろうと感じている。
『気のいい女たち』、『ミツバチのささやき』など濱口竜介自身が影響を明かしている作品は様々あるが、この映画をより楽しむには、古今東西あらゆる映画を見ていることが必要だろうと感じさせる程に、圧倒的なものであった。