いぬ

悪は存在しないのいぬのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
長回し過ぎだが唯一無二の傑作
冒頭の導入、セリフ一切なく、音楽と景色のみの長回しが延々と続き、早々に寝落ちした。前半はそんな感じがしばらく続き、失敗したかな?との思いも頭をよぎる。が、しかし、次第に話が転がりはじめると目が離せなくなり、時にクスッと笑えたりしながら、どんどん引き込まれ、終盤では心の中で「えええーーーーっ!」と叫び、見終わった後は呆然とし、その後何日にもわたってこの映画のことばかり考えずにはいられなくなる。そんな作品。一言で「面白い」とは言えないが、とにかく見てよかったぁ!!!と心底思えた。
俳優陣の棒読みのようなセリフ回しをマイナスと感じる人も少なくないようだが、自分はこの棒読みこそが本作品に独特のリアリティのようなものを与えていて、「狙った棒読み」だと感じた。棒読みの「さじ加減」が抜群という感じ。特に主人公は、あの喋り方以外ありえないんじゃないか、と思った。
音楽とのコラボもこの映画の特徴のようだが、自分にとっては音楽が邪魔でしかなかった。棒読みの主人公はじめ、不自然なはずなのに自然に聞こえる会話劇は、本当にそこで起こっているかのようで、むしろBGMなしで見たかった。
今をときめく有名監督の作品なのに、大手シネコンで一切上映がなく、東京でわずか2館での上映はなぜだろうと思っていたが、見て納得。いわゆるエンタメ映画ではない。でもこれ、作品の独特の個性やテイストは維持したまま、十分エンタメに仕上げることもできたんじゃないかとも思う。
ラストの展開は、最近見た「ゴッドランド」のストーリーに通ずるところがあるなぁと思った。
いぬ

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