横川百子

悪は存在しないの横川百子のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
現時点とりあえずの上半期鑑賞作品暫定1位です!

そして色々書く前に忘れないうちに…

【映画終わり際、あるいは途中思わず「えっ!!!」って声が出たランキング】

(順不同)
・「複製された男」のラストのクモ
・「マグノリア」のカエル
・「軽蔑」の交通事故
・「クリスタルスカルの王国」のUFO
・「運命のダイアル」のタイムスリップ
・「ミスト」の霧が晴れた後の戦車
・「続・猿の惑星」の世界の終わり
・「エグゼクティブデシジョン」のスティーブン・セガール
・「ゲーム」のセーフティーエアマット
・「めまい」の無理矢理過ぎる転落死
・「最後のジェダイ」の老婆の宇宙遊泳
・「ホーリーマウンテン」のこれは映画だ!
・「インターステラー」の相対性理論はこの際無視だ!
・「テネット」の理解しようとしないで、感じて!
・「バットマンvsスーパーマン」のマーサは彼のお母さんの名前よ!

と、けっこうキリがなくなって来たので本題に戻りましょう…。

やはり常々私が濱口竜介監督作品を鑑賞する度に喰らわされる「初見は神」という毎度の鑑賞後感をご多分に漏れず今作においてもきっちり喰らわされました。
そうなんです。毎度初見時は、次何処に連れて行かれるのか見当もつかなくなるプロット及び対話、過去に観てきた諸作のなんとなくの経験則やシナリオのテンプレート・定石からこちらが予測する展開を打ち砕いてくる「サラっと終わって次に行くと勝手に思っていたシーン・シークエンスが全然終わらない!それどころかどんどん肥大してなんかいつの間にか劇中一番オモロいハイライトになってる感」等、今作も健在でほんとに毎回安定の濱口竜介監督!
作風は少し違うけど、鑑賞中のなんとなくの感触とゆーか同様のスリリング感と言う点で似たものを感じる深田晃司監督と共に私個人的にはやはり現在日本映画界最強のシナリオライターだと更に確信いたしました。

と、言いつつまだ濱口作品は、
「ハッピーアワー」
「寝ても覚めても」
「ドライブ マイ カー」
「偶然と想像」
「悪は存在しない」
の五作品しか鑑賞しておらず(一番観たい『親密さ』は何故か毎度時間が合わず未見)
濱口ビギナーの私感にあまり説得力もないのですが上記の五作品初見時必ず今のような興奮状態になっているのは紛れもない事実です。

と同時に、濱口作品を観ていて毎度感じるのが「現在日本で活躍する監督の中で最もハリウッド向きでハリウッドで確実に成功する可能性が高いのは、実は濱口竜介監督なんじゃないの?」という意外な暴論です。

絶対にハリウッドのジャンル映画、中でもサスペンス・ミステリー・スリラーなんかを撮ったら絶対凄いの創る気がするんだけどなぁー。
一見、黒沢清監督とかの方が撮れそうな感じなんだけど、黒沢監督的感覚はやっぱりハリウッドと言うよりヨーロッパ的な感覚の方が強いと思うから濱口竜介監督には意外や意外、いつかハリウッドで撮って欲しいわ、てか勝手な予測だけどいつか撮るんじゃないかなぁー。
そー言えば、今作は序盤の「陸わさび」のところでなんとなく黒沢清監督の「カリスマ」の毒キノコを思い出したんだけど全編観終えたら尚更「カリスマ」となんかイメージがカブりました。なんか感覚的に…ですけど。

でも惜しむらく濱口作品てそーいったスタイルから、一番面白くインパクトあって興奮するのは初回鑑賞時がMAXなのが強いて言えば残念なんですけど、やっぱりこれだけ興奮させて貰えたら十二分ですね、

傑作!!

【追記】

ラストシークエンスについては、自分なりに考察したり色々想像する事こそが楽しみであり醍醐味だと思うけど、明確な答え探しに囚われ過ぎるのも良くないと思ったので文章化はしてませんが、個人的にはあのスリーパーホールドに繋がる伏線の一つ(伏線という書き方も良くはないけど)として、再訪した高橋・黛を待たせながらの巧の薪割りにおける明らかな精度の劣化・ルーティンの乱れ描写も後の巧の行為に繋がる要素の一つとして見逃せないのではないか?とは思っています。