このレビューはネタバレを含みます
単純な見方をすれば、グランピングに関する会社と町の諍いを題材にしたかったが、オチがまとまらなかったので、ああいう風にしましたというような受け取り方もできる。なかなか難しい作品ですね。
子役にフォーカスされたシーンがちょいちょいあるので意味を考えたけれど、意味というよりかは、子どもの頃の世界への向き合い方について振り返させられた。
世の中や身の回りの世界の大人たちの中では重要なことが起きていたとしても、子どもにとっては、生活の中の一部でしかなく自然に生える草木や空の移り変わりや鳥やら動物やら身の回りの物事が気になって、それらに深い意味はなく、ただ存在している世界、それらをただ感じる日々だったなと。
大人たちの考えるような善悪というのは社会と関わっていくなかで身についていくもので。さらには東京で生きる人と地方で生きる人ではその善悪や価値観が異なっていたりするもので。
昨日コンビニのレジで親子連れが会計をしていて、会計が終わったおにぎりを子どもがレジのその場で開封して食べようとしたらしく母親が諌めていた。「あり得ないでしょ!」と。
その行動があり得ないかどうかは社会で長く生きてきた大人だからわかることなんだから「ここで食べちゃダメ。」とダメであることをまず教えれば良いのにと見ていて思っていた。
聖書では、アダムとイブが禁断の実を食べたことによって善悪の知識を得てしまい、そして必ず死ぬ存在となってしまったと聞いたことがある。
映画の作中でも善悪は後天的なものと言いたいのと言いたかったのかな。
ラストに明らかな”悪“な行動が出てくるけれど霧がかかっている世界でストーリーの時間軸からは切り離されたファンタジックな雰囲気だなと思った。
ハナは死んだのかもしれないけれど、事実としてはそれだけで、社員の首を絞めたりっていうのは起きたことがどうかはどうでも良くてメタファーなのかな。
殺しきらない、気絶だけさせるところに意味があるのだろうか。聖書にもカインとアベルの殺人の話はあるが、今作は殺人ではないからな。
映画について考えさせられる教材的な作品に思えたが、映画体験としてはあまり心地よいものではなかったな。
ハナ役の子役さん、カオル役の俳優さん素敵だったな。今後注目したい。