このレビューはネタバレを含みます
こういう「すごい」作品に出会いたくて映画を見ている。
何も起こらないシーンがほとんどなのにずっと不気味。
不気味だけど綺麗。
不気味だけど心地よい。
だから画面から目を離すことができない。
「何か起こりそう」と「何も起こらない」のギリギリのバランスを保ちながら進み、最後の最後でそれが崩壊し唐突に終わる。
エンドロールが流れ始めたがその文字を認識することはできなかった。それはラストの飲み込み方が解らず視覚への情報処理が後回しになっていたからで、このときの自分は口をぽかんと開けたマヌケ面をしていることにも気づいていない。
唖然としていたのである。
マヌケ面を晒した頭の中でラストシーンの再生と巻き戻しを繰り返し、自分の中で飲み込み方を探るのだがどうにも収まりが悪い。知恵の輪が解けないときのようでもどかしい。
その間にもエンドロールは流れ続ける。
黒い画面を滑り上がっていく白い「それ」と共に時間も流れていく。
しかし、キャスト、スタッフ、制作、と流れているはずのそれに焦点を合わせていなかった意識はやがて脳内でひとつの言葉の像を結んだ。
悪は存在しない