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悪は存在しないのkanappeのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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結論から言うと「ドライブマイカー」「偶然と想像」のほうが好みなんだけど、
石橋英子さんの音楽と木々のショットが長く続き、気がついたら作品の世界に引き込まれてしまった。
一度作品の世界に入ってしまうと、お馴染みの会話劇がさらに私たちを没入させ、衝撃のラストへと突き進んでいく。

世界的に注目されている日本人監督が、商業作品に振り切らず、もっと巨大な「何か」にチャレンジしているのが驚きだった。

その「何か」とは普遍的に存在する悪と思しきものかと思いきや、
結末にかけて、「人間が考えている悪なんて所詮人間のものだ」と言う、
私たちでは到底手がつけられないテーマだと言わんばかりに突き放される。
鑑賞後は突然雪山で迷子になってしまったように、不安になり、困惑して、頭が重くなった。

今までにも濱口監督は、震災やコロナなどをマクガフィンと使わずとも、時々社会に痛みを与える事象として、自分の作品の中に投影していた。
そんな痛みがなくとも、この映画が成立してしまう、ことが、とても恐ろしい…。
そして、それは悪ではない、と言うこと。
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