コミ坊

悪は存在しないのコミ坊のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5

僕が映画を観るきっかけになった「寝ても覚めても」でお馴染みの濱口監督作品。
あれは悪い意味での問題作になってしまいましたがとてもいい作品だと思っています。

そんなネームバリューがあるからこその前半といった感じ。
本当に無名の人がおしゃれ気取って撮ってたら賛否の否が多めに出そうなほどのゆったりまったりとした映像。しかもインサートだとしたらなかなかの長尺。それと巧さんのセリフのぶっきらぼうさ。漢a.k.a.GAMIさんに似てたな。
しかしそれが後々の東京人との対立や芸能会社の慌ただしさと対比になって、まさに自然での暮らしと都会での暮らしのように感じる。

自然保護と地域の活性化のバランスは本当に難しい問題で、確かにそこに悪は存在しない気がする。強いて悪と言うならば現場にも出向かないコンサル会社の人は個人的にはいけ好かない。
でもこういう作品を通して田舎暮らしに目を向ける機会が増えるといいなと思う。
私事だけど、GWに知床やらの道東方面にお出かけして完全に死んでる町々を見たから本当に将来の地域格差が心配になった。
(その時に見たNo. 1過疎町は斜里郡小清水町字止別ってところ。)

僕は東京生まれだけど親の同僚の別荘が長野にあって子供の頃は夏によくそこで今作のような暮らしを体験させてもらってた。
薪割りもしたことあるし、今でもそういう暮らしに憧れてる。
その頃はチビ小僧だったから考えたこともなかったけどあの生活にタバコが最高に見えて仕方なかった。
ある意味今後東京に憧れを持って生きることがないだろうから東京生まれでよかったかもとは思う。


それはそうと、衝撃の結末すぎてポカンとしてしまった。
あれはどう解釈するべきなのだろうか。
前向きに水挽町のことを知ろうとした途端の出来事だったから尚更困惑。
自然と人間の本質を垣間見た。
夜の森はシンプルに怖い。
でもそれは自然にとってはとっても自然なことで怖いという認識は人間生活をするものの感覚だから"悪"ではないんよなー。ふう。

自分で言うのもなんだけどこれまでの作品で難解なものでもある程度自分なりの解釈はできてきたつもりだけど今作は本当にわからない。
これかなって言うのはある。ずっと会話ではシカの通り道って表現になってたけど、それはつまり獣道のことで人間で言うところの通勤通学路。それを汚されるってことは人身事故とかで電車が止まって迂回しなければいけない苛立ちとかに繋がるのが東京人には理解できないのかなっていうそういう巧さんの苛立ちがああいう場面で衝動的な行動に繋がってしまったのではないか。やはりそこには自然を大切にしたい、そこに住む動物の気持ちに寄り添った結果なのかなと。


まあ何が言いたいかまとめるとみんなバランスよく地方に住もう!ということ。



ここまでダラダラと綴ってきて最後にまた余談で申し訳ないんですけど、言いたいことが一つ。
先日の道東旅行をフィルムカメラに収めてきて現像に出したんですよ。
去年の夏までは札幌のエスタにあるビックカメラで普通に現像できたんですけど、それが移転して僕の使ってるlomographyっていうフィルムはここでは現像できなくて東京に郵送になるから2週間かかるって言われて。
は?札幌ももう終わりだなと。
こうやって大都市の方に人口が集まっていくんだろうなと思ったのはまた別の機会に。
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