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悪は存在しないのmatsuomidnightのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.9
確かに地方の描き方がおかしい。農業や林業など、たぶん従事しているだろう仕事が全く見えず(蕎麦屋と便利屋だけ?)、生活の匂いがしない住民たち。日本のどこにでもある地方の様子とはちょっと違うような、うまく言えないが独自の価値観で生きている住民で構成されているコミュニティなのだろうか。例えば何か宗教の教義で住民同士は結ばれているような感じもする。(映画「ミッドサマー」で描かれている世界観)グランピング施設の説明会で、住民がとても論理的(一人を除き)に質問していくのを見てもそう思う。質問のレベルが高すぎて、こんなに風にはとてもいかないし、デベロッパー側も戸惑うのは当たり前だろう。毎回毎回、子どもを迎えに行くのを忘れ、子どもは独り林の中を抜けて家路を急ぐ。父親は「一人で帰るな」とは言わない。どうも我々の価値観とはどこか違っている。そう考えると、観客に解釈を丸投げしているラストシーンも理解できるような気がしてきた。どちらかと言うとデベロッパーの、そうグランピング施設を作る側の(或いは我々側の)価値観とはそもそも違うのだ。映画の冒頭から何か起こりそうな不穏な空気感。木立を下から見上げた映像の長回し。そして石橋英子の音楽が増幅装置として効果的に機能している。
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