Happa2001

悪は存在しないのHappa2001のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

濱口竜介監督の映画は初めて観たが、この人は人が何をどうしたら人がその映像を見るかをほんとうによく理解してる人だと思った。それくらい面白いショットやシークエンスしかない映画だった。
 例えば、駐車場で子どもたちが変な格好で立ち止まっているシーンがパンで撮られて、何事かと思ったらそれがだるまさんがころんだだったというのがわかるシーンがある、この何に腑に落ちたのかわからないが何かに合点したような、「!」という記号によってのみにしか表せないような発見の快感があるショットもあれば、舞台となる村へ建設するグランピング施設についての説明会のシーンや、そこで住民に説明する立場となった芸能事務所の社員である二人が、再度、村に向かう際の車内でのたわいのない会話などは、全く飽きさせない、むしろどうなるんだと凝視してしまいさえしながら見てしまう。
 そしてラストのあの、日が落ち、霧が漂う森の中を主人公となる男が目を閉じたままの娘を抱きかかえながらどこかへと消えてゆくシーンをとらえたショットはこれを見逃したらこの映画を見たとは言ってはいけない、それほどに凄まじい。このラストの「意味」などという、すべての映画に含まれている語りは、(言葉ではなく映像によって語っているのだから)直接的に言葉によって言い当てることはできないのであり、その語りを読み取るための材料は映画の中に十分すぎるほどに置かれているのだから。
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