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悪は存在しないのarzachのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.9
物語の不思議な世界に引き込まれ、音楽と映像と自分が一体化するような感覚を受けた。鑑賞後すぐにサントラを聴きたいという衝動に駆られたが、いまだ発売されておらず。

一つのシーンで弦楽器を用いた重厚な音楽に浸っていると突然場面が変わり、ぷつっと無音になる。まるで一つの空間には一つの音楽しかありえず、その音が境界を超えることはないというように。

森が存在するには、様々な要素が上手くバランスを取ることが必要だが、結局余計なことをして滅びるのは人間だけで、自然は自分で治癒する力を元々持っているのだろうなと思った。人間と自然の違いは時間感覚の差だろうか。

無機質な会話に無感情な人のやり取りが、どうしてここまで心の奥底に響くのか。演じるという意識を削いだ先に見える人間本来のリアリズムを感じた。
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