冬の白い空を後ろに、毛細血管のように枝を張る木々が延々と映し出されていく冒頭。
気持ちがざわざわする。
音楽から着想を得たという情報は鑑賞後に知った。
スクリーンにうつされていく景色は音楽にとてもよく合っていると思った。
とても静かな映画で、セリフもあまり多くなく、ともすれば退屈な作品なのかもしれないが、全くそんなことはなく、住民説明会のピリッとしたシーンでは、気持ちがぐっと前のめりになった。
主演の大美賀さんはプロではないのに、危うげな演技と見受けられるシーンはほぼなく、かえって「ザ・役者」なひとが演じないことによって、リアリティが増している気がした。
まるでドキュメンタリを見ているように。
エンドロール後はラストの余韻で茫然としてしまった。
見終わってしばらく経った今も、タイトル「悪は存在しない」について思いを巡らせている。