LEON

悪は存在しないのLEONのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます



『悪は存在しない』はよく分からなかった。
これまでの濱口監督の過去作はあまりに好きすぎて再上映される度に足を運んでいるけれど(親密さ、ハッピーアワー、パッション、偶然と想像など)今回は「あちゃ〜まだ私には受け取る準備できてなかったのかな〜」みたいな感じ。
上映後は「あぁ〜分からなかったし、分からない中にも受け取るものを見つけられなかったな〜。数年後に観たら変わるかな〜。」と思いつつ、あまりの受け取れなさにパンフレットを購入して帰宅したのでした。

ただ、小坂竜士さん演じる高橋と渋谷あやかさん演じる薫(グランピングの住民説明を任されていた男と女)がおもしろかった。演じ方であんな風に人間性の変化が見えるってすごいなぁとわくわく。濱口監督が特に声(嘘のない声)にこだわる理由もよく分かるなぁと感じた。
あとは少女が失踪した場面で、村中の人が手分けして探すシーン。あのシーンを観ているうちに、人間の命ってこんなに他者から大切にされるものなんだなぁと実感。これは普段の自分の物の見方が関わっていると思うけれど、極端に言えば人間は存在しない方が良いんじゃないかと思うことが多いので、このシーンを観て受け取るものがあったんだろうな。

タイトル『悪は存在しない』
存在しないのだと言い切っているので、真っ直ぐに映画を観て解釈するとラストも仕方のないそれぞれの正義や流れの中で起こってしまったものと思われるかなと想像できる。
ただ…濱口監督の過去作を観てきた限りだと、(良い意味で)かなり意地悪な方なのでそんな真っ直ぐな意味では無いのかも…。(いや、意地悪というよりは真っ直ぐすぎるからこその正直すぎる残酷さ、みたいな…)
存在しないと言い切ることで、本当にそうなのかを問いかけ、自分自身ひいては人間の汚さや傲慢さを突きつけているようにも思いました。
あとはパンフレットやインタビューを読む限り、監督本人もかなり自然の流れや時間に身を委ねて撮影を進められた印象。自然の中で感じたことや発見したこと、気持ちなどを大切に一つ一つカットをその場で積み上げていった結果、こんなものが出来ていた。そんな感じだったのかなぁと想像した。

ここからは映画をどう観るか・捉えるかの話。個人的な映画の楽しみ方としては、どう観てどう解釈しても全て自由。映画はそういうもの(娯楽)だと思っています。正確に読み取ることよりも、どれだけ勝手に解釈して自分のものに出来るかが個人的には映画の楽しみの大部分を占めている気がする。
自身の過去や境遇、環境、今の状態、性格や性質によって、同じ映画から受け取るものが全然違うものになるのが面白さ。その日その映画を選んだ時点で現在の自分が炙り出されているし、さらに映画から何を受け取ったのかが自分を知るリトマス紙になっているなぁといつもワクワクする。
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