ゆっきー

悪は存在しないのゆっきーのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
ド傑作。みんな言ってるが冒頭の「実は車載カメラでした」なの何??さすがに驚いたし森の中の横移動撮影で巧が画面から1時消えて戻るといつの間にか娘の花をおぶっている、などトリッキーさが際立つ。

説明会の場面で巧が立って喋りながらおもむろに帽子を脱ぐ場面、まるで威嚇のような脱ぎ方で怖かった。頭から何か出てくるんじゃ?と思った。ラストの場面、(まるでアンゲロプロス『霧の中の風景』みたいな)娘の花も帽子を脱ぐのだが、どういう演出なのだろうか。
これまた前半のトンビ?と走る花を同一画面に映しきる根性あるショットにも驚いた!

花が行方不明になって、一旦家に戻ってから探しに行く場面、芸能事務所の会社員の女性が目で「お前も探しに行けよ」と先輩社員を促す場面、画面の奥でひっそりと視線の動きで見せていて並の作家ならクローズアップでわざわざ見せるような所を引きで撮っていて嬉しくなった。

水がひとつのテーマではあるが液体よりも気体の方が印象的に撮られていると思った。ウンコから立ち上がる湯気、うどん屋の湯気、煙突からの煙が木々の隙間から差し込む光に照らされる場面、など。

花がこの田舎の世界にはそぐわない、どこか異物的な存在感がありその秘密がラストの鹿との切り返しでどこかわかるような気がした、というのも顔の造形?から同じような存在が向き合っている感じがしたのだ。まぁこれは私の気の所為であるかもしれないが。

陸ワサビや鹿の死体などモノからの主観ショットについてはミケランジェロ・フランマルティーノが『四つのいのち』で既にやっているので驚きなどなかった。
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