人間とは、複雑な生き物。
地域住民と東京から来た開発業者の二項対立。住民説明会では後者の窓口担当者が悪者に映る。その後の彼らのドライブシーンを見て、彼らが悪意の持たないただのサラリーマンであるということが分かったような気になって安心する。けれど、それすらも彼らの一側面でしかなくて、本当の意味でその人を理解するためには、もっと時間をかけないと分からない。その人のこれまでの人生のことを、僕たちはほとんど知らないから。
断片的な情報からレッテルを貼って、知った気になって、ストーリーが見えたような気がして映画を見ている。だから、最後のシーンは衝撃的に感じてしまうのだけど、そもそも他人を分かることはそんなに簡単ではない。
人間の複雑さは善悪という単純な二元論で語ることなんてできないんだ。
「『人間の一側面だけを見てその人が悪であると決めつけてはならない』というメッセージを伝える映画なのだろう」と表面をさらっただけの浅い考察をしながら映画を見てしまったけど、さらにメタ的にそういう人間の愚かさを認知することになった。
決めつけて分かった気になる態度よりも、分からないことを称える態度が僕たちには必要なのかもしれない。
