強さに取り憑かれた男を描いた作品。富と権力をもった男が傲慢さゆえ転落していく。背景には孤独や喪失感。昨今ありがちというか、いわば”神話解体”系の話。昨年の「ナポレオン」とも重なるところがある。
主人公を情けない存在として哀感を込めているというより、あくまでも男として突っ張る姿を引いた目線で捉えている。男性性を体現するような欠陥を抱えた男という意味ではマイケル・マン的といえるかもしれないが、作品全体のトーンといい、彼の著名作と比べるとシブい作品という印象。
もちろん、「フォードvsフェラーリ」とも全く違うし、エンタメ性は希薄。
特定個人の伝記映画としても、群像劇的な人間ドラマとしても、メロドラマとしても、アクション映画としてもどれも中途半端で、物足りなさが残った。いろんな要素を入れているものの、そのどれもが主役にはならない程度な感じ。
最大の魅力は、耳をつんざくほどのエンジン音。それについては、映画館じゃないと絶対に味わえないものだと言い切れる。
