自分が観に行った時、「フォードvsフェラーリ」のようなノリを期待していた他の観客が終了後に戸惑っていた。
気持ちはわからなくもない。
映画自体はエンツォ・フェラーリという人物を描く事を主眼としている。
そのため「イタリアの公道レース・ミッレミリアに勝利する」というわかりやすい目標はあるものの、そこまでの道のりだけでなく家庭内不和(ペネロペ・クルスの圧が凄いの何の)や会社経営の危機など個人的な要素も同じ位じっくり描いている。
これらを並行して描く事でエンツォ・フェラーリの複雑さを表しているが、それぞれが独立し過ぎててバラバラの話を見せられた感が強いのも正直な所。
またミッレミリア自体もレースの迫力や轟音っぷりは凄いものの、それらがもたらす興奮以上に事故の悲惨さが強調され(事故前の家族描写から見せる点が厭らしい)、高揚感はわざと出さないようにしている印象を受けた。
そのため熱血スポ魂系ドラマを期待すると肩透かしを食らうが、1人の人間が持つ複雑さをそのまま取り上げたドラマと考えると、この構成は納得できる。