みんな醒めないまま冷めている。主人公もそうだし、周りもそうだし、そこに向けられる映画の視線もそう。それが良かった。
なんというか、「生死を賭けて戦う」みたいな変なヒロイズムをやられても乗れないなと思っていたら、ほとんど真逆のものを見せられた、という感じ。淡々と色々なことが起きて、べつにそこに対する道徳的評価とか感情移入とかは求められていない。見ているだけ。それはレースで人がたくさん死んだ時代に対する、ひとつの誠実な物語りの方法なのかもしれない。何にせよ、とても好きな語り方だった。
車のシーンは多くはないけど、どれも結構よかった。いちばんは、ミッレミリアが街中に入り、ドライバーの横顔越しにぼやけた観客が映り、同時にその歓声が入ってくる、その瞬間。
どうでもいいけど、他の人のコメントで「ヴィルヌーヴが絶賛」とあり、ジャック・ヴィルヌーヴのことかと思ったが、普通にドゥニ・ヴィルヌーヴのことだった。